迷子警報。

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fantasic carnival

memories of childhood


「乙夜の一番古い記憶って何?」


「はぁ?」



突然振られる話の内容ではない気がする。
思いっきり顔をしかめたあたしに、杳は苦笑を返した。


「だから、憶えてるなかで一番古い思い出。何?」
「突然なに?」
「気になったんだよ。いいだろ、教えてくれたって」


良くないから渋ってることに気付け。

そして周りの女子の視線が痛い。

容姿端麗、
眉目秀麗、
才色兼備、
文武両道
と、貧相なあたしの語彙で思い付く限りの四字熟語が全て当てはまる上に、
この地域では有名な名家である龍崎家の次期当主である龍崎杳。

そんな杳に近づきたい女子なんて山ほどいるわけで、

何の因果か、
その龍崎杳と幼馴染みで、
彼にいたく気に入られているあたしは、
日々敵意に満ちた視線に晒されている。



重たいため息を吐き出す。

「…面白くないどころか、ただの悪夢なんだけど」
「何それ」


杳は気乗りしないあたしに気を遣うことなく、興味津々といった感じで聞いてくる。





仕方ない。白状しよう。


そこは瀟洒な大通り。

霧の中蠢く無数の影。

それらは全て着ぐるみだった。

耳があるべき場所から綿が飛び出たくま。
目の代わりのボタンが取れかけたライオン。
右腕がないうさぎ。


どれもこれも壊れたぬいぐるみのようなのばかり。

そんな壊れたぬいぐるみ達が躍りながら行進している。
まるでカーニバルみたいな光景。

それに圧倒されて立ち竦む幼いあたしの前で、
継ぎ接ぎだらけのネコが立ち止まり、手を差し出して言う。





「ようこそ、楽しいカーニバルへ」





「…―――」




「え?何?」

杳が何か呟いたようだったので、聞き返すと

「うっわー悪趣味」

セリフとは裏腹に楽しそうな笑顔が返ってきた。

「だから話したくなかったんだって。それでも聞き出すとか、龍崎の次期当主はどんな教育を受けてるわけ?」
「そういうなよ。にしても、これは予想外。何?夢?」
「そうでしょ。こんな経験、現実にはありえなくない?」


半分嘘。


本当は昔の記憶すぎて、現実だったのか夢だったのかすら曖昧だ。

現実に起こるわけがないとは思うが、あまりに鮮明な記憶だから、少し怖い。



「まぁな。…で?」
「は?」
「続き。そんでどうなったんだ?」


なんでそんなに興味津々かなぁ…。

もう少し他のことに興味持ってよ。
周りの女の子とか。周りの女の子とか周りの女の子とか。
あたしよりキレイで可愛い娘たくさんいるってのに。


にしても続きを聞かれるとは思ってなかった。


「続き…ね。ないよ」
「ない?」
「それ以降の記憶が全くないんだよね。その何日か後にあんたと遊んだ記憶はあるんだけど」
「何だよ、やっぱ夢か」


つまらなさそうな顔で言われたって困る。ていうか、これはあたしが悪いのか。


「あ、そういえばさ」


「今度は何?」
「カーニバルみたいって言うので思い出したんだけど」
「何よ」


あたしを真っ直ぐ見て、笑顔の杳が言う。



「あのな―――――」














追記よりあとがき&コメ返し

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fantasic carnival

prologue




そこは瀟洒な大通り。

霧の中蠢く無数の影。

それらは全て着ぐるみだった。

耳があるべき場所から綿が飛び出たくま。
目の代わりのボタンが取れかけたライオン。
右腕がないうさぎ。


どれもこれも壊れたぬいぐるみのようなのばかり。

そんな壊れたぬいぐるみ達が躍りながら行進している。
まるでカーニバルみたいな光景。

それに圧倒されて立ち竦む幼いあたしの前で、
継ぎ接ぎだらけのネコが立ち止まり、手を差し出して言う。





「ようこそ、楽しいカーニバルへ」





ねぇ、杳。助けてよ。
あたしの頭は相当イカレちゃったみたい。


こんな


悪夢みたいな現実に見覚えがあるなんて。

















追記よりあとがき


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罪と罰


「ごめん、もう無理」





何言ってるの…?
そんなの嫌…
嫌だ
嫌だよ…






「もうキミのこと、好きじゃない」






そんなこと言わないでよ。
どうしても
どうしても
ダメ…?


だったら…



「…ねえ」
「うん?」






「嫌いになるなら僕を殺して」






「え?」

君の手に鋏を握らせて僕の心臓へ導く。

戸惑うような、
今にも泣き出してしまいそうな
それなのに口元が笑みの形に歪んだ表情の
君。



ごめんね。
手は離してあげられない。



だって

君に愛されない僕なんていらない。
愛しい愛しい君の手で僕の命を絶ってよ。

君に愛されないという罪を負った僕に











罰を頂戴。










独り反省会。


やってしまった…orz

DECO*27さんの「罪と罰」をエンドレスリピートしていたら
気づいたら出来ていた産物です。

本家好きな方、本当に申し訳ありません。
あくまで個人的な解釈です。

素敵な本家様↓






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冬の日のあたしとロマンスの神様と。


神様なんていない。
特に、ロマンスの神様なんて。

そりゃ、毎年初詣には行くし、去年だって近所の神社に合格祈願に行った。
そのおかげかどうかは知らないけど、こうして高校生として冬を迎えられた訳だけど。

でも。

それとこれとは話が違う。
断じて違うと言い張る。
だって
ロマンスの神様がいるのなら、


告白三連敗なんて惨めなことになるもんか!!


友達は慰めてくれたが、三連敗は三連敗。
視界に幸せそうなカップルが目に入る度に泣きたい衝動に駆られる。
振られた後泣いていたせいで、いつもより一本遅い電車に乗ると、着いたのは三番線だった。
階段の上り下りが今日ほど嫌な日は人生初だ。
それに加えて。
田舎の「一本遅い電車」は、三十分以上遅い訳で。
いつもなら日が沈みきる前に駅に着くのに、今日はもう真っ暗だ。
加えて、今日は両親が外出していて居ない。
誰も迎えに来ないから、
歩けない距離じゃないが微妙に駅から遠い自宅まで、真っ暗な田舎道を歩いて帰らないといけない。

「最悪」

やっぱり神様なんていない。
今日は厄日だ。
重たい鞄を背負い直して、人の波に流されて階段を上る。
階段を上りきったところで、大きなため息をつく。
幸せには、とっくに逃げ切られてるので、出し惜しみしずに吐き出したら、真っ白だった。

そろそろ雪でも降るんじゃないだろうか。

…まぁ、あたしには一緒に雪を眺めてくれる人なんていないので、どうでもいいのだが。
どんどんマイナスに傾く思考。
これじゃダメだ、と頭を軽く左右に振ると、幸せそうなカップルが目に入った。
あれ…涙で霞んで何にも見えないや。
そう、思った瞬間。



ずるっ



「え?」



足が滑った。身体が傾く。

ヤバい。


落ちる…っ!!!



死にたくない!!!

「ぐぇ」

我ながら、なかなか女の子らしくない気持ち悪い声が出た。
何が起こったのかよく分からないが、あたしは落ちなかった。
代わりに首根っこを掴まれたのだが。
そのままズルズル引っ張られて、すっかり人が減った連絡通路の隅っこに辿り着く。
どうやら、誰かが首根っこを掴まえて助けて此処まで連れてきてくれたらしい。



……どうせ助けてくれるなら、もう少し優雅にかっこよく助けて欲しかったものだ。
でも、助かったのだから文句は心の中にしまっておこう。
とにかくお礼…、と思って助けてくれた人の顔を拝見。

「大丈夫か?」





………やだ、イケメン。





あたしが通う高校の近くにある男子高の制服を着ている。
ネクタイの色をみるに、同級生のようだ。

「あ、えっと…助けてくれて、ありがとう」
「いや、いいけど。つか、何であんた泣いてんの?」

…そうしえば、自分の可哀想な身の上を嘆いて泣いてたんだった。
しかし、こんなイケメンに可哀想な身の上を語るのはあたしの些細なプライドが邪魔をする。

「あ…っと、今日色々あって、いつもより遅い電車になっちゃったんだけど、今日親が迎えに来れなくて。だから家まで歩いて帰らなきゃいけないんだけど予想以上に暗かったから…」
「不安になった?」
曖昧に頷く。
なかなか上手く誤魔化せたじゃん、自分!とか悦に浸ってると
「…送ってやろうか?」
幻聴が聴こえた。

こんな少女マンガ的展開が現実に起こるわけないじゃん。

やだなー、あたしってば幻聴まで聴こえるなんて。

でも一応聞き返しとく?

「あの…何て?」
「いや、迷惑だったら、いいんだけど。最近不審者とかうろついてるらしいから、送って行こうか?」
これは都合のいい夢か。
「い、いいの?」
「俺ん家遅くなってもうるさくないし。むしろ女子を一人で暗い道帰したなんて知られたら殺される」
真顔で言うから思わず笑ってしまった。
「お願いしますっ!」
「…おう」
あたしから微妙に視線を反らしてから返事が返ってきた。
短い髪からのぞいた耳が妙に赤いのは寒さのせいなのか、自惚れていいのか。

どっちにしろ


ヤバい、ときめいた。


まだ失恋の痛みは残ってるけど
すぐには切り替えられないけど

ロマンスの神様、
チャンスをくれて
ありがとう。

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オレンジ色の恋。

夕焼けの中、手をひかれて帰ったことを思い出す。

頭1.5個分高い背中を追いかけながらオレンジ色の風景を歩いた。
確か、お母さんと喧嘩して、泣いて家を飛び出したとき。
川原で泣きじゃくる私を探しに来てくれたんだった。
暫くしたら戻ってくるだろう、と楽観的な母は家で待っていたらしい。だけど、あの人だけは私を探してくれた。
その事実が嬉しくて、幼かった私は簡単に舞い上がって言ったのだ。





「私が大きくなったらお嫁さんにして」





今思い出しても恥ずかしい。
穴が無くても掘って入りたい気分になる。
子供って、なんて恐ろしいことを言うんだろう。

家に向かう足を止めて、つま先とにらめっこ。負けは確定してるから、仕方なくため息を落とした。

あのとき。
とんでもないことを言い出した私にあの人が向けたのは、笑顔だった。


『お前が大きくなっても、その気があったらね』


家に着いた。
靴をぬいで上がり、カバンを放り出して、電話を手に取る。
もうずっと、連絡を取ってないのに、番号は指が覚えていた。
今まで何度もかけようとして、やめたから。

だけど、今なら。

5回目のコールが途切れて、代わりに懐かしい声がした。

「もしもし?…うん。そう、私。久しぶり。……あ、ちょっと聞きたいことがあってさぁ……え?違う違う。進路 とかじゃなくて…」

受話器を持ったまま、後ろを振り返る。
窓から見えるのは、
昔と変わらない
夕焼け。

思わず笑顔になる。





「あのときの約束って――まだ、有効?」





返ってきた答えに、夕焼けが滲んで見えたのは、
あの人には内緒。




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